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札幌地方裁判所 平成2年(わ)354号 判決 1990年6月26日

本籍

北海道白老郡白老町字荻野六番地

住居

右同所

建築業

山本周敏

昭和一〇年一一月四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官村井三郎及び弁護人金谷幸雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、建築業を営む傍ら、営利を目的とした有価証券の売買を継続的に行なつていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右有価証券の売買による利益を除外して株式等を購入するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和六一年分の実際所得金額が一億三七二四万七〇九七円であり、これに対する所得税額が八三二六万三八〇〇円であるにもかかわらず、昭和六二年三月一六日、北海道苫小牧市旭町四番一七号所在の所轄苫小牧税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の所得金額が五二四万八九一〇円であり、これに対する所得税額が六二万四三〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もつて、不正の行為により正規の所得税額との差額八二六三万九五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(二通)

一  山本悦子(三通)及び山崎光一(三通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「株式売買回数及び売買株数調査書」「有価証券売買益調査書」「通信費調査書」「接待交際費調査書」「雑費調査書」「有価証券調査書」「委託保証金調査書」及び「調査事績報告書」と題する各書面

一  押収してある「売買報告書及びご案内」と題する書面一綴(平成二年押題一〇四号の1)、三和シャッター工業株式会社名入り青色ビニールカバー付き手帳一冊(同号の2)及び昭和五八~六二年度分確定申告書(控)一綴(同号の3)

(法令の適用)

被告人の判示所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、所定の懲役刑と罰金刑を併科し、なお情状により同条二項を適用し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一八〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件は、被告人が、昭和六一年分の所得につき、有価証券の売買によつて得た雑所得一億三二〇〇万円余を除外した青色申告をなし、八二六三万円余の所得税をほ脱したという事案であつて、ほ脱額は右のとおり高額であるうえ、そのほ脱率も九九・二五パーセントと極めて高率であること、犯行態様は、株式取引等有価証券の売買によつて得た雑所得を一〇〇パーセント除外するという大胆悪質なものであること、犯行動機は、有価証券取引税を納付したうえ更に所得税を正直に申告して納付していたのでは儲けがなくなるというものであつて、酌量の余地がないことなどに徴すると、犯情には好ましからざるものがあり、被告人の刑事責任は重いといわなければならない。

しかしながら反面、被告人は、本件ほ脱の結果について、修正申告のうえ本税及び付帯税の全額を納付していること、業務上過失傷害罪の罰金前科一犯のほかに前科前歴がないこと、反省の情には顕著なものがあることなど、被告人のために斟酌すべき有利な情状が認められ、その他被告人の年齢、経歴、家族関係などの諸事情をも併せ考慮すると、主文のとおり量定するのが相当であると思料する。

(求刑 懲役一年二月及び罰金二五〇〇万円)

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 大山隆司)

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